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【3月6日】第22回文化と地域デザイン講座を開催しました。【参加報告】

  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

3月6日、第22回文化と地域デザイン講座を開催いたしました。当日の様子について、参加報告をお届けします。

 

今回の講座は「京都の映画文化・産業を考える―京都文化博物館・映画文化創造支援センター長をお招きして―」をテーマに、森脇清隆さん(京都文化博物館 映像文化創造支援センター長/映画専門学芸員)をお招きして、ご報告をいただきました。


京都文化博物館は、京都府が収集した映画資料の保存・修復・公開を一手に担う博物館で、併設のフィルムシアターでは、開館日に合わせてたくさんの企画上映が行われています。


京都の映画文化を考えるうえで外すことのできない 時代劇 。講座報告では、博物館の事業、時代劇の今までとこれから、そして、国際的な若手育成の場である「京都フィルムメーカーズラボ」の実践についてお話がありました。また、リプライ・質疑応答では、博物館と地域とのパートナーシップ、映画産業の持続可能性など、たくさんの議論が湧きおこりました。

 

時代劇と日本の映画産業―――


国内の映画興行収入のおよそ4分の3をシェアする邦画。そのうちもっとも勢いのあるジャンルはアニメ映画で、2025年は興行のおよそ半分を占めました。他方で今回のテーマである 時代劇 も「侍タイムスリッパ―」を中心にブームが沸騰中。広く海外に目を向けると「SHOGUN」が爆発的な人気を博しています。

こうした時代劇の世界的な流行の背景には、時代劇の海外資本化があるといいます。海外で時代劇に求められるものが、派手なアクションから、より時代劇らしい精神性へと重心を移している。現代の日本の映画産業には、時代劇を支える技術を世界に伝え、継承していくことが求められていると森脇さんは語ります。

 

京都フィルムメーカーズラボの取り組み―――


実際に、日本の映画産業とコラボレーションをしたいという希望は、従来から多く寄せられていました。しかし、既存の撮影所の枠組みでは企業や言語のハードルがありうまくいかない。そうしたなかで生まれたのが 京都フィルムメーカーズラボ (以下、KFL)でした。

 

KFLの公用語は英語で、国内外の若手映像作家が集まり、京都市内各地で講義・実習を行います。二つの主な取り組みのうち「ハンズオン時代劇」では、参加者20人が二つのグループに分かれて、3分間ほどの短編作品を制作します。撮影は市内二つの撮影所で行われ、撮影所スタッフの補助指導のもと、実際に役者と意思を通わせながら制作に取り組みます。

一方、「マスターズセッション」では、映像制作について講義と討論が行われ、内容は制作の資金調達の方法など実務的なことにも及びます。討議はレクチャーの時間に収まらず、合宿場に帰っても続き、その全体を通して、参加者は映像制作を学び、同時に参加者同士でコネクションを築いていきます。

 

KFLは、京都ヒストリカ国際映画祭の若手育成プログラムとして開催が重ねられてきました。映画祭の実行委員会には京都府や撮影所が入り、その「触媒」として博物館が入ることで、場所の確保や講師の招聘が進んできたといいます。

 

報告の様子
報告の様子

 

リプライ・質疑応答では、今回も会場全体で議論が交わされました。

 

研究所の松本とのリプライでは、博物館の事業と役割について、指定管理をどう続けていくか質問。それに対しては、「地域に根を張ることで、いまの文博にしかできない価値をつくっている」と森脇さん。「博物館は地域の触媒である」ということ、その具体例として、アニメ「たまこまーけっと」の制作時に、京都文化博物館が京都アニメーションと出町桝形商店街の仲立ちとなったことや、京都アニメーションが被害にあった事件のあとに行われた支援について紹介がされました。

 

次の話題は、映画文化と海外からの撮影所訪問について。「好きな映画が撮影された場所」「ここにあの監督がいてた」など、撮影所に憧れを持ってやって来る訪問者の存在との交流が、撮影所で働き技術を磨いてきた人の自信につながるというお話があがりました。また、関連して、国内・海外の後進に技術を指導・継承する機会が生まれることで、ワークショップなどを通じて熟練者の心理的・金銭的インセンティブにもつながるのではないか(持続可能な経営化)という論点も生まれました。

 

参加者との質疑応答では、フィルムメーカーズラボの資金繰りの独自性や、映画制作を支える様々な技術のAI代替の可否、オリジナルのフィルムを保存しておくことの意義など、さまざまなコメントと議論が続きました。

 

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今回の講座でとくに印象に残ったのは二点。一つ目は、京都の持つ映画資源の豊富さです。質疑応答では、閉鎖された神奈川県の旧・松竹大船撮影所が引き合いにあがりましたが、たしかに、自治体をあげて映画産業の振興や映画資料の収集・保存に取り組むのは京都独自といえそうです。ただそれ以上に、京都文化博物館の存在が大きいように感じます。歴史展示を目当てに「ぶんぱく」を訪れた際、毎回、美術やアニメに関する特別展を開催しているのが印象深かったのですが、今回、森脇さんの映画部門のお話を聞いて、納得の連続でした。他機関との協働で企画を呼び込むノウハウや、博物館・フィルムシアターを通して普段から培う企画力が、フィルムメーカーズラボのように地域・企業・行政といった様々なアクターとの事業へと活かされているように思いました。


二つ目は、訪問者の存在が、撮影所で働き技術を磨いてきた人の自信につながるという点です。こうしたプロセスは、生きた文化遺産をマネジメントする際にも、大きな示唆を与えているように思われます。マネジメントには金銭を呼び込むという要素も多分に含まれますが、単に消費する・される関係にとどまらず、地域に主観的な好影響をもたらすことが求められるのではないでしょうか。それはマネジメント事業への地域の愛着や信頼につながり、持続可能な枠組み作りにも寄与するとも考えられます。一つ目の注目点とも重なりますが、そうした調整機能、そして学術的な調査・研究の機能を有する「ぶんぱく」のような「媒介」が重要な役割を持っているのではないかと考えます。


最近では、ある映画テーマパークが加害行為を娯楽として付すような企画を導入して物議をかもしていますが、そうではなく地域に根差した丁寧な映画産業・映画文化の広がりにこれからも注目していきたいです。


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森脇さん、貴重なご報告ありがとうございました!


 

(事務局 関谷 洸太)

☛京都文化博物館 https://www.bunpaku.or.jp/


 
 
 

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