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研究所について

設立の動機 Background

文化芸術基本法制定に伴う

文化政策の関連分野拡大

本研究団体設立の契機は、「文化芸術基本法」が2017年6月に制定されたことにある。同法に基づいて「文化芸術推進基本計画(第1期)」が2018年3月に閣議決定された。同法と同計画は、文化や芸術の持つ本質的な価値に加えて、文化芸術が有する社会的、経済的な価値にまで言及している。

 

特色の1つは文化政策の対象を拡張させたことである。同法の2条では「観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野における施策との有機的な連携が図られるよう配慮されなければならない」と明記した。そして中央政府を挙げた総合政策の必要性をうたった。省庁の縦割り行政を超えるための推進体制として文化芸術振興会議の設置を求めた。構成メンバーとして、文部科学省・文化庁に加えて、関係各省庁(内閣府、総務省、外務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、観光庁)の名前を具体的に挙げた。従来の文化振興、あるいは芸術振興に比べて、幅広い関連分野を法の対象とした点は意義深い。

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本研究所の理事は、文化政策・アートマネジメントの研究者、あるいは実践者である。しかし同法の施行後、もはや文部科学省や文化庁が所管する分野だけを見つめるだけでは物足りなくなってきた。観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業など幅広い関連分野のありようを調査研究し、総合的に「文化を活かした社会や地域の将来像(地域デザイン)」を考えていきたい。

本研究団体の構成員は日ごろから、文化政策やアートマネジメントの現状と課題を調査・研究してきたものの、上記の法律や計画が登場した新しい時代において、これまで見ていた世界が限定的なものだったのではないか、と自問自答している。多様な分野の研究者や実践人材と知り合い、交流し、相互に学び合う基盤をつくりたいと願う。

国家や自治体の財政悪化、少子高齢化の進展、人口急減に伴う地域コミュニティの再構築、外国籍の人たちの就労に伴う多文化共生、公共施設の耐用期限と更新工事の必要性、官民連携のまちづくり、東京の一極集中、など政策諸課題の解決は待ったなしの状態である。「文化を活かした地域デザイン」を考えるために、総合的な研究や事業が急務となっている。

急激な少子高齢化

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国立社会保障・人口問題研究所が2018年3月に発表した「将来推計人口」では驚くべき数字が明らかにされた。2015年と2045年を対比するとき、2015年に1億2809万人を記録した日本の総人口は、27年後の2045年には1億0642人にまで落ち込む。高齢化は一層進み、65歳以上の高齢者の比率は、2015年の26.6%から2045年には36.6%まで上昇する。秋田県に至っては50.1%が65歳以上になる。日本という国家は、生産人口(15-64歳)が急減するため、人的資源が枯渇し、60-70代の人材活用が急がれている。

熟年層は社会経験が豊富なうえ、資格を有したり、経理や人事などのスキルを備えたりしている。こうした時代に文化を活かした社会や地域の振興を考えるとき、シニア世代を抜きに地域づくりは語れない。シニア世代の人たちは若年層に比べて一定の年金支給を期待できるものの、「人は食べるだけにあらず」なので、生きがいを求めて文化に関心を持つとみられる。美術や音楽等の文化鑑賞にとどまらず、文化の現場にかかわる熱情を有していると思われる。逆に、減少著しい若者層は、熟年世代のスキルを活用したいと切望する。

そこで浮上する新たな課題は「多世代がどうしたら出会えるのか」「多世代はどのように協働できるのか」である。そして「多世代の人々が出会うことで、どのような文化芸術の振興が期待でき、社会を活性化するのか」という問いかけが新たな研究になる。本研究所の名称に当初、「次世代」という言葉を用いていた由縁はここにある。

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